邸別1996〜2002 2世帯和風住宅
古くからの集落のなかで100年以上生き続けてきた住まいを建て替える、そこには家族一族の長い歴史がありました。そして建て替えと同時に息子さん世帯との同居という新しい歴史が始まる。住まいという意味を改めて考えさせていただきました。住まいの構造・機能的なものだけでなく、伝統・文化・慣習そして住む人、それぞれに過去・現在・未来があり、それらを調和することの大切さを学んだような気がします。研究熱心なお施主様との連日の打合せは今も良い思い出です。


【建築DATA】
1階床面積:128.97u(39.0坪)
2階床面積:71.00u(21.5坪)
総床面積:199.97u(60.5坪)
小屋裏空間:28.14u(8.5坪)
外観です。まわりとの調和をとりつつも近代的な爽やかさを出すために苦労しました。切妻の銀いぶし瓦と軒の一文字葺きがシャープなラインを見せています。
土庇は、夏を旨とする」住まい造りの知恵のひとつです。和洋と問わず取り入れたいものです。
玄関ホールです。玄関正面(写真では左)の壁は、巾が7尺5寸あり圧迫感が出そうだったので、それをどう解決するかが設計段階からの課題でした。最終的に月桃紙を貼ってみたのですが、奥行き感が出て大好評でした。
10帖の客間です。書院の向こうには広縁があります。床柱はしぼり丸太、大黒柱は(写真では見えませんが)桧です。上品にまとまりました。
家の南東に位置する勾配天井の居間です。部屋を縦断する太鼓梁は、本当は旧家の梁を再生する予定でしたが、解体時に取り外された梁に虫食いが見つかり、急遽新品に換えさせていただきました。
壁はしっくい塗りです。天井付近に見える窓のおかげで夏でもほとんどエアコンがいりません。冬はこの部屋の真中に置いたコタツに家族全員が集まるそうです。
2階の子供部屋です。このお宅は無垢材にこだわり、適材適所で何種類もの無垢材を使い分けています。
1階は主にご両親がお使いになるので桧、ヒバ、杉など和風の節が出にくい木を使い、2階は山のぼりが好きなお施主様の好みに合わせて、桧(節あり)、タモ、パイン材を多く使っています。
寝室の畳ベッドの框(枠)に旧家の鴨居を利用しました。100年以上経った真っ黒い松にカンナをかけたら、源平の木肌と香りだけでなく松ヤニまで出てきて感動しました。
旧家の思い出として大黒柱を小屋束に利用しました。親戚の方々が喜んでくれたと聞いて私も嬉しく思いました。(この当時は輻射熱を反射するアルミ箔を貼った構造用合板を気密用に利用していました。

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