4.〜五感全てで安らぎを感じる住まい〜  (2000年執筆)

 「ただいま」と玄関ドアをあけると、誰もが『ああ、我が家に帰ってきた。』とホッとします。様々なストレスが渦巻く現代社会において、住まいには、このホッとするというリラックス(癒し)効果が今まで以上に必要とされているのでしょうか。

 職場では眩しい青白い蛍光灯の光、清潔なクロス、手入れが簡単で取り替えも簡単なドア、無機質で安価な事務機器、冷たいコンクリートやクッションフロアの床のなかで、能率重視で仕事を進めていきます。これらの内装材は人間の心身を活性化し、作業を能率良く進めていくための仕上げ材としては優れているのですが、一方で私たちは知らずのうちにストレスを溜めていってしまいます。車や機械の騒音、機械油や薬品の臭い、人のざわめきなど、玄関を一歩外へ出ると私たちの身体は様々なストレスにさらされています。

 しかし家に帰ってきて、玄関ドアを開けると、家族の笑顔と暖かい明かりに迎えられ、夕食のおいしそうな匂いに包まれ、きれいに飾られた花や絵、お気に入りの装飾品を眺め、そして木のぬくもりを感じ、ホッと肩の力が抜けていく。人は五感でマイホームに戻ってきた安堵感を感じ、張りつめていた緊張がほぐれます。ですから住まいの内装材には人を暖かく包み込むような優しさが必要だと思います。そういった快適な空間のなかでこそ、本当の心地よい休息の時間を過ごし、床については深い睡眠をとり、翌日また活動するための鋭気を養うことができます。

 私たちがお手伝いできるのは住まいのハード面だけなのかもしれませんが、住む人の住まい方に合わせてコーディネートさせていただくことや、内装材をより選ってご提案させていただくことによって、少しでも住む人にリラックスしていただけるものを提供することが可能です。

 安らぎ、休息、睡眠、そして朝、差し込む光に自然と目覚める。深呼吸する。そんなふうに五感全てで安らぎを感じることができる住まいを追い求めていきたいと思います。

3.〜三度建て替えなくては満足する家は持てない?〜  (1999年執筆)

 「三度建て替えなくては満足する家は持てない」!物知り顔でこんなことを言う人がいます。ついつい納得してしまうような響きがあります。果たして本当なのでしょうか?

 答えは、ある意味では正しくて、ある意味では正しくないというところでしょうか。住まいを計画するとき、当然のことながら、誰もが「一生に一度の買物だから絶対成功させたい!」と強く望んでいます。「三度目にうまくいけばいい」なんて思う人はいません。そして、私が知っている多くの方々は、初めての住まい造りでも、みなさんたいへん満足していらっしゃいます。

 では、なぜ、「三度建て替える」なんて怖い話がでてきてしまうのでしょうか。その一番の理由は、長い間に家族構成や生活環境が変化して、それに住まいが合わなくなってしまうからだと思います。試しに、今の家族の状況を10年前に予測できたかどうか考えてください。「子供が増えた」「親と(子供と)同居することになった」「子供が皆独り立ちしてしまった」「隣の空き地に工場ができてしまった」など、10年前には考えつかなかったような様々な変化があったのではないでしょうか。ですから、最初は満足していても、どうしても時間の経過とともに、ああすればよかった、こうすればよかったというところがでてきてしまうのです。

 では、どうすればよいのでしょうか。第一に住まいをプランする際にある程度将来を見越した設計にすること。ただし、10年くらい先までの将来でいいと思います。あまり先のことを考えすぎて、せっかく新築したのに使いにくいのも困りますし、もし将来の予測が外れたら意味の無いものになってしまいますから。

 次に、実はこれが一番重要なのですが、いずれリフォームすることまで考えて、住宅をフレキシブル(柔軟)に計画するということです。二つの子供部屋を隣接して、必要に応じて仕切ったりつなげたりするプランは良く知られています。これは間取りのテクニックですが、本当は、住宅は構造的にもフレキシブルでなくてはならないのです。例えば、増築するときには屋根や外壁を取り外します。他の部分を痛めないで取り外せることが大切です。止むを得なく耐力壁を外すときは、その分、他の壁を補強できなくてはなりません。またメンテナンスの面でみれば、和室(洋室)を洋室(和室)にするとか、押入れを無くす(増やす)とか、配管や配線を更新するとか、電話やテレビ、コンセントの差込口を増やすといった変更が簡単にできる方がよいでしょう。これらは住宅の構造に負うところが多く、消費者サイドの選択には限界があり、業者サイドが考えるべきものです。

 現在の住宅の寿命は、結露対策が完全であれば、30年前のものとは比べものにならないほど飛躍的に延びています。しかし、家族構成の変化は、人間の寿命が変わらない限り、昔と同じスパンで訪れます。その時に、住宅の構造上対応できずにマイホームがスクラップになってしまうのか、それとも、改築や改装といったリフォームによって新たに再生されるのか、これが三度建て替えなくてはならない住宅と本当の意味でのロングライフ住宅の差なのです。ですから、最初に書いた「ある意味では」というのは、「その住宅の構造によっては」ということになります。

 プレハブ住宅は、工事生産品なので工期は早いのですが、建築中の設計変更はもちろん、将来のリフォームも非常に難しい構造になっています。その弱点を打ち消すためリフォームのしやすさを宣言しているメーカーもありますが、お茶を濁している程度にしか思えません。100年住宅などと安易に宣伝しているメーカーもありますが、プレハブ住宅の多くが家族構成や住宅設備技術の変化に対応できずに、30年程度で建て替えられてしまうような気がします。

 日本には、屋根瓦の葺き替えや外壁羽目板の張替えなどの手入れをすることによって、百年以上も存在している木造住宅はたくさんあります。当社の住宅は、現場で職人が丁寧に一つ一つの作業を積み上げて住宅を造っていくカスタム方式を採っているので、建築中の変更はもちろん、何十年建ってもフレキシブル(柔軟)なリフォームが可能です。さらに、設計段階において将来のリフォームの可能性をにらんで柱や耐力壁を配置すれば、よりいっそう簡単に(きれいに安く)リフォームすることができるようになります。

 家族構成や生活環境の変化に柔軟に対応できる構造。日本家屋では昔から当たり前に行われていたことが、また一つ見直されてきました。ほんの少し手を入れることで、いつまでも在りつづけるロングライフの住まいをご提案していきたいと思います。

2.〜夏でも省エネです〜  (1998年執筆)

 最近ようやく大手住宅会社などでも省エネを謳い文句にした住宅を販売するようになってきましたが、それらのほとんどがグラスウール等の断熱材を単に厚くしただけのもので、あくまで、住む人がエアコンや換気扇を四六時中稼動させることを前提とするという自己矛盾を抱えたものです。
 それでも、冬季においては従前の家とは比べものにならないほどの少しの暖房エネルギーで暖かい空間が得られます。これはさほど難しいことではありません。なぜなら、家の中には熱源がいっぱいなのです。それは、冷蔵庫やテレビなどの家電であったり、コンロの火やお料理であったり、住んでいる人の体温や呼吸であったり、数え上げたらきりがありません。ですから、冬季にはこれらの熱と暖房機器の熱を逃がさないようにするだけで、暖かい空間が簡単に得られるのです。

 しかしながら、夏季においても家の中の熱源は冬季と同様にいっぱいあります。残念ながら、家の中には冷源はなにもありません。窓を閉めてほおって置けば、室温は上昇する一方です。単に断熱材を厚くしただけの住宅では、この厳しい状況の夏を省エネで乗り切ることは出来ません。

 昔から、日本の住宅は夏を旨として造られてきました。今後も温暖化が進むことを考えれば、ますます住宅は夏向きに造られるべきです。弊社では、従前より高気密高断熱工法を静岡県の気候風土に合わせて改良してきました。実際に住まわれたお施主様にも非常に高い評価をいただいております。
 これからも「太陽と風と「元気」の出る家」として、夏向きの省エネ住宅を造っていきたいと考えております。

1.〜四季折々の心地よさ〜 (1997年執筆)



 住まいは、住む人の生命、財産を守り、家族を健やかに育てる場所として、長い年月をかけてその地域ごとの気候風土、ライフスタイルに合わせて時代とともに進化してきました。まだ電気もガスもない時代に、太陽や風、自然のエネルギーをうまく利用して快適性を高め、また構造体となる木材の特性を最大限利用して住まいの耐久性を高めた先人の知恵には驚くべきものがあります。

 一方最近では科学の発達とともに様々な建築資材や電化製品が開発・輸入され、住宅業界においても千差万別の資材や工法が市場に氾濫しています。これらのなかには、従来にはない非常に優れた性能を持つものがある反面、建築地の気候風土や住む人の快適性をまったく無視したものも多く見受けられます。

 「太陽と風と「元気」の出る家」は、建設地の気候風土に合わせて先人が築き上げた技術を生かしながら、現代の新しい技術を吟味しながらも積極的に取り入れて、それぞれの優れた性能を相乗的に組み合わせることによって、

・・・生命を守る・・・より健康に、より快適に、より安全に(バリアフリー)
・・・財産を守る・・・より災害に強く(耐震性)、より長持ちする(耐久性)
・・・自然・・・自然との調和と利用、省エネ

などの様々なニーズに応えた住宅です。

 そして、「太陽と風と「元気」の出る家」の最大の特徴は、なるべく機械や電気に頼ることなくイニシャルコスト、ランニングコストの双方を上げずに、太陽や風、自然を利用して四季を通じて健やかな暮らしを実現したことです。
 たとえば、住まいの中にいながら夏には木陰でそよ風を感じる時の清々しさ、冬には日溜りに集う時の暖かさといった四季折々の心地よさを味わっていただけると思います。

 自然の中に住まいがあり、住まいの中にやはり自然の一部である人がいます。ですから、住まいは人と自然をやさしく調和させるものでなくてはなりません。この調和がうまくいくときに、住む人が本当の安らぎと健康を感じることができるのではないでしょうか。